【ビジネス文書検定】 尊敬語と謙譲語を正しく使い分ける

第72回 ビジネス文書検定2級(表現技能)より

【問1】

次は,自社の休憩ラウンジを,当社とは無関係の外部の人に使われないようにするための掲示文です。この中の下線部分の言葉を適切な敬語表現で表すにはどのようにすればよいか。下の中から適当と思われるものを二つ選びなさい。

(1) ご利用できません
(2) ご利用になれません
(3) ご利用いただけません
(4) ご利用していただけません
(5) ご利用していただくことはできません

第72回 ビジネス文書検定2級(表現技能)より

【問2】

次の各文の下線部分には,「察する」という意味の敬語が入ります。それぞれどのような敬語に言い換えればよいか。前後の文脈を考えて答えなさい。

(1) さぞかしお喜びのことと          いたします。
(2) 事情ご       の上ご了承くださいますよう,お願いいたします。



【解説】

 今回は、敬語の使い方をテーマに2問取り上げました。ポイントとなるのは尊敬語と謙譲語の使い分けです。

 問1は、下線部分「利用できない」の敬語表現として適切な選択肢を二つ選ぶ問題です。

 適当なのは(2)と(3)。(2)「利用になれません」は尊敬語「ご~になる」を否定した形であり、相手の行為を表す形としてふさわしいです。(3)「利用いただけません」は謙譲語を使った表現。「(当社が、関係者以外の皆さんには)利用してもらえない」というように、こちら側が恩恵を受けるような形で相手への敬意を表す言い方です。

 それ以外は不適当な表現となります。

 (1)「ご利用できません」は謙譲語「ご~する」の可能形「ご~できる」を否定した形です。この表現は、本来「(私は)お届けできません」「(私は)ご説明できません」といったように、自身の行為に対して使うもの。問1では、ラウンジを利用できないのは自分ではなく当社関係者以外(=相手)です。相手の行為に対して謙譲語を使っているため不適当となります。

 (4)(5)はいずれも謙譲語「ご~する」を使っているため、相手の行為を表す表現として適切ではありません。

 問2は、文脈に沿って「察する」を適当な敬語表現に書き換える問題です。解き方は以下の3ステップがあります。
 ①問題文を呼んで文意を理解する。
 ②「察する」のは誰かを考える。
 ③尊敬語か謙譲語かを判断する。

 (1)は「どんなに喜んでいることだろうと察します」という意味の文章です。察するのは自分と考えられますので、謙譲語の「拝察」とすればよいのです。これを「ご拝察」と回答する受験者がしばしば見受けられますが、謙譲語「ご~する」+「拝察」が二重敬語で不適切です。

 (2)は相手に「こちらの事情を察して了解してほしい」と頼む文章です。察するのは相手なので、尊敬語の「賢察」「高察」「了察」に書き換えるのが適当です。なお、問題を見ると下線部の前にすでに「ご」が入っていることから「お察し」は正答になりません。

 2問とも基本的な敬語パターンを扱っていますが、改めて問われると混乱してしまう受験者が多かったのではないでしょうか。過去問題を活用した指導を行うとともに、町中の掲示物や電車内のアナウンスなど身の回りで使われている敬語に注目させるとよいでしょう。また、Microsoft Wordには校正機能があり、間違った敬語を入力すると≪敬語の誤り≫と表示されます。こうしたツールも適宜活用し、正しい敬語表現への理解を深めていただくよう、ご指導をお願いいたします。(就職指導ニュースVol.53より)