【ビジネス実務マナー検定】社外の人には、個人的な事情まで伝えない

第67回 ビジネス実務マナー検定3級(電話実務)より

【問題】

次は諏訪凛子が得意先からの電話で、名指しされた人が不在のとき「申し訳ございません」と誤った後、不在の理由(下線部分)として話したことである。中から適当(話して差し支えない)と思われるものを一つ選びなさい。

(1)「ただ今化粧室に席を立っただけですので、戻り次第こちらからおかけ直しいたしますが」
(2)「旅行で今日まで休んでおります。明日こちらからおかけ直しするということでよろしいでしょうか」
(3)「電車の事故で出社が9時半ごろになると連絡がありましたが、こちらからおかけ直しいたしましょうか」
(4)「体調が優れず本日は早退しました。明日は出社すると言っておりましたので、明日こちらからおかけ直しいたしますが」
(5)「家族が入院中の病院に寄ってから出社する予定ですので、10時ごろにこちらからおかけ直しいたしますが、よろしいでしょうか」


【解説】

 電話の取り次ぎに関する問題です。ビジネスの場において、社外の人からの電話で名指しされた人が不在の場合、そのことをどのように伝えれば良いかを考えましょう。「社外の人に対しては、個人的な理由は口外しない」というのが、ビジネス社会の基本的なルールであることを踏まえて考えます。

 不在の理由として伝えてもよいのは(3)です。電車など公共の交通機関の事故による遅延は、個人ではどうにもなりません。多くの人が巻き込まれており、個人的なことではないため話しても差し支えありません。(3)を選んだ受験者は48.2%と、正答率は低い結果となりました。

 それ以外の(1)(2)(4)(5)で話した不在の理由は、全て個人の私的な事情です。つまり、社外の人にわざわざ説明する必要がない内容です。

 正答以外では(4)を選んだ受験者が多く、39.7%でした。体調が優れないのは個人的な事情であり、相手には関係のないことです。言えば余計な心配をかけることにもなります。明日は出社するというのであれば、「本日は終日不在で戻らない」とだけ言えば済みます。相手の用件が急ぎであれば、その場で対応すればよいのです。

 (1)は7.1%。「化粧室に席を立っただけ」と言うことで、それほど時間はかからず席に戻ると分かりやすく説明したかったのでしょう。しかし、化粧室に行くという極めて個人的なことを言うのは、不在の人への配慮を欠いています。「少し席を外している」と言えばすぐに戻ることは伝えられます。

 (2)は2.6%。旅行もプライベートな事情であり、相手に言う必要はありません。単に「今日まで休暇で不在にしている」「本日は休みを取っている」で十分です。

 (5)は2.3%。家族についての事情は、他人に知られたくない人も多いでしょう。入院中ともなれば、仕事に影響しないかと無用な不安を与える場合もあります。遅れて出社するというのですから、単に「何時ごろなら連絡できる」とだけ伝えらばよく、「私用で遅れる」などとわざわざ言う必要もありません。

 取り次ぎでは、名指しされた人にも相手にも、適切な配慮が必要です。他人の事情を勝手に言わないのが基本的なルールです。仕事相手であっても、名指しされた人が個人的な関わりがあるのなら、事情は本人が直接話せばよいのです。ただし、相手が内線電話でかけてきた社内の人である場合は、関係や立場によってきちんと事情を説明しなければならない場合もあります。

 受験者には、この様な個人的な事情の扱いに関する基本的なルールは、なじみがないかもしれません。個人情報に敏感な世の中でもあるので、必要なことは何か、社内と社外での対応の違いなど、設問を通じてご指導ください。(『就職指導ニュース』vol.56より)