【ビジネス実務マナー検定】 家族からの緊急用件での電話への対応

第61回 ビジネス実務マナー検定3級(電話実務)より

【問題】

Q.下柳かおるが電話を取ると課長の奥さまからで、「主人と至急連絡を取りたいが、携帯電話がつながらない」と言う。課長は外出中と言うと「私の携帯電話に連絡するよう伝えてもらえないか」と言われた。課長は商談のため取引先に出掛けている。このような場合下柳は、どのように言うのがよいか。次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

(1)課長に連絡して、奥さまに連絡するように伝える、と言う。
(2)課長は取引先に出掛けているので、連絡は取れない、と言う。
(3)取引先の電話番号を教えるので、課長を呼び出したらどうか、と言う。
(4)課長は商談中は電話に出ないので、留守番電話を利用してはどうか、と言う。
(5)取引先に私用電話はできないので、課長が会社に戻ったら連絡するように伝える、と言う。

【解説】

 第60回から出題領域に【電話実務】が追加されました。その電話応対力の領域から、用件や伝達の受け方に関する問題です。課長が商談で外出中、奥さまから「主人と至急連絡が取りたい」と電話があった場合、留守を預かる下柳はどのように対処すべきでしょうか。ポイントは緊急性の高さです。

 適当は⑴。この選択肢を選んだ受験者は44.6%でした。
 奥さまは課長の携帯電話につながらず慌てて会社に電話したのです。「至急」の言葉でも分かりますが、緊急性の高い用件であることは明白です。用件が私用であっても、この場合は奥さまの意を酌んで課長に仲介するべきです。また、課長は取引先にいますから、部下の下柳から連絡をするのが自然な対応となります。

 それでは他の選択肢を見ていきましょう。

 ⑵「取引先に出掛けているので、連絡は取れない」という答えは、奥さまの要望を完全に拒絶した対応です。これが仮に業務に関わる用件であった場合、下柳は迷わず課長に連絡を取るはず。連絡を取ることは可能なのに「連絡は取れない」と断るのは不親切です。⑵を選んだ受験者は1.9%と、さすがに少数でした。

 ⑶は上司の奥さまに対し、自ら取引先に電話をかけるよう提案しています。一言で言えばありえない対応。課長がいるのは私的な場所ではなく取引先です。奥さまの用事であったとしても、連絡を取るのは部下である下柳の役割。⑶を選んだ受験者は2.3%でした。

 ⑷が不適当な理由は2つあります。1つ目は「課長は商談中は電話に出ない」というのはその通りでしょう。であれば、携帯電話の留守録にメッセージを残すのは手段の一つです。しかし、これでは課長がメッセージを確認するのがいつになるか分からないため、奥さまの「至急」には対応できません。2つ目は、奥さまは「私の携帯電話に連絡するよう伝えてもらえないか」と下柳に頼んでいます。そうであれば課長に連絡をとるのは下柳がやるべきことです。⑷を選んだ受験者は17.0%でした。

 ⑸を選んだ受験者は34.1%と多い結果となりました。「取引先に私用電話はできない」と言うのは、下柳自身がすぐに行動しない言い訳でしかありません。私用の連絡であることが取引先に分からないように配慮すればよいのです。課長を電話口に呼び出してもらい、直接用件を伝えれば問題はありません。また「会社に戻ってから伝える」も⑷同様に奥さまの「至急」に応えていません。

 電話応対では「相手」「用件」「緊急性」など、さまざまな状況を判断し、柔軟かつ適切な対応が求められます。また相手の要望を正確に把握し、応える気構えが基本的な態度であることを生徒・学生にご指導ください。

(『就職指導ニュースvol.50』より)