【秘書検定】 落とし物の取り扱いで求められる気配り

第126回 秘書検定3級(必要とされる資質)より

【問題】

Q.秘書Aが、上司と取引先U氏との面談の後、応接室の片付けをしていたところ万年筆が落ちていることに気付いた。上司に確認すると、U氏の物だという。このような場合の対処について、次の中から適当と思われるものを一つ選びなさい。

⑴U氏と外で会うこともあるだろうから、上司に預けておく。
⑵Aが預かっておき、念のためU氏にメールでそのことを連絡する。
⑶U氏の秘書に電話で万年筆のことを連絡し、よければ送ると言う。
⑷U氏が取りに来ることもあるだろうから、何もせずAが預かっておく。
⑸落とし物はビルの管理室に届けることになっているので、その通りにする。


【解説】

 来客の落とし物の取り扱いに関する問題です。傘や本などの忘れ物については過去にも出題されていますが、万年筆の落とし物は初めてのケースです。

 本問におけるポイントは2つあります。

 一つ目は、落とし物が万年筆だということです。一概には言えませんが、万年筆は他の筆記具と比べて高価であり、U氏が大事にしている物である可能性が高いと考えられます。また、ボールペンなどとは違い、書き味などの好みに関わる筆記具である場合が多く、手元にないとU氏は不便に感じるかもしれません。

 もう一つは、設問の「上司に確認するとU氏の物だという」というところから、落とし主がはっきりしていることです。相手が分かっているときは落とし主に知らせてどうするか尋ねるのが一般的な対応ですが、この場合は上司と面談するために来社した取引先のU氏です。

 これらを踏まえ、どのように対処するのが最適でしょうか。授業では、選択肢を見せずにグループワークなどで学生・生徒に考えてもらうのもよいでしょう。真っ先に考えつくのは、すぐにU氏の携帯電話に連絡して知らせる、ということでしょうか。それに対しては、設問に「U氏の携帯電話」について書かれていませんから、それ以外の対処方法を考えてみようと導きます。

 適当な選択肢は⑶。すぐに知らせた方がよいことには間違いなく、そのためには確実に連絡が取れるU氏の秘書に伝えて「よければ送る」と提案しており、親切な対処であると言えます。秘書であればU氏のこの後の行動も分かっているはず。もし次の商談などがあったとしても、適切なタイミングで連絡してくれるでしょう。受験者の78.2%が⑶を選んでおり、ほとんどの受験者は秘書に連絡するのが適切な対応であることを理解できたようです。

 では、その他の選択肢を見てみましょう。

 4つのうち、⑵だけがU氏に直接連絡しています。そのため適当と考えたのか、18.4%もの受験者が⑵を選びました。秘書検定の設問で単に「メール」とある場合は、会社のパソコンでやり取りするメールを指します。U氏は少し前に面談を終えて帰ったところであり、まだ会社に戻っていない可能性が高いわけです。帰社してすぐにメールを読んだとしても、結局U氏からこちらに連絡させることになってしまいます。秘書を介すという確実な方法で連絡している⑶と比較すれば⑵が不適当であることは明白です。

 残りの選択肢を選んだ受験者はいずれもごく少数でした。

 ⑴U氏と外で会うこともあるだろうから上司に預けておく、という発想は短絡的です。いつになるかも分かりませんし、上司の手を煩わせることにもなるからです。

 ⑷については、U氏が取りに来ることは考えられるにしても、何もせず預かっておくのではあまりにも受け身です。このときの対応がよければ、今後の関係性に少なからずよい影響があるでしょう。秘書としてはそこまで考えて、能動的に気遣いのある対応をする必要があります。

 ⑸は、落とし主の見当がつかないときの対処。今回は考えなくてよい選択肢です。出題のねらいは、このような場合にいかに相手のことを気遣った対応をすることができるかです。その対応がひいては上司の仕事によい影響をもたらすことにもなることをご指導ください。

 (『就職指導ニュース』vol.51より)