【秘書検定】 上司の不在中に入った連絡・相談は急ぐものや重要なものを伝える

第120回 秘書検定2級(職務知識)より

【問題】

Q.秘書A子の上司(営業部長)から,「急な都合で今日は休む。夕方電話する」という連絡が入った。次はA子が,夕方の電話で伝えたことである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

1)「慈善事業に寄付をお願いしたい」と言ってきた上司の友人の来訪。
2)「明朝一番で臨時の部長会議を行いたい」という総務部長からの連絡。
3)「明日は休暇の許可をもらっていたが,必要なら出社しようか」というA子の申し出。
4)「明日の取引先会長の葬儀に,代理で参列してもらえないか」という本部長からの依頼。
5)「明後日の面談の予定を明日に変更してもらえないか」という得意先からの問い合わせ。

【解説】

 上司が急に休みを取る場合,秘書は上司のスケジュールを調整して,仕事に支障が出ないように動かなければなりません。連絡を受けた時点ではまず,上司からのA子に対する伝達事項を聞き,そのうえで予定の変更や調整に必要な指示を仰ぐことになります。「夕方連絡する」とのことですが,急ぎの場合の連絡方法や明日は通常通り出社するかどうかの確認も必要となります。
 選択肢は上司不在の一日を終えた夕方,上司から連絡が入った際にA子が伝えた内容です。その中から不適当を選ぶということは,明日でもよい(この電話では言わなくてもよい)ことが答えになります。

 不適当は(1)。「慈善事業への寄付の依頼」で「上司の友人」が来訪したのです。通常,友人からの寄付の依頼ですぐに返事を求めるようなことはありません。従って,上司に伝えるのは明日でよいことになります。正答率は5割ほどでした。急ぎかどうかの判断がつかず選択しなかった受験者が多数いたと推測されます。

 他の選択肢で,選んだ受験者が多かったのは(3)です。設問には示されていませんでしたが,A子は明日は休暇の許可をもらっていました。しかし,今日急に休むことになった上司にとって,明日は特に秘書の手助けが必要になります。であれば,出社しようかと申し出るのは秘書としてごく当たり前の行為ということになります。申し出た結果,出社しなくてもよいと言われれば,他の人に引き継いだり上司にメモを残したりすればよいのです。4割近くの受験者が(3)を選びました。何が問われているかを正しく理解せずに「必要なら出社しようか」という言い方が不適切と判断されてしまったのかもしれません。

 その他の選択肢を見ていきましょう。

 (2)は,総務部長からの「臨時部長会議の連絡」です。臨時部長会議は,上司にとって重要度が高く,ましてや,「明朝一番」と聞けば上司は早めに出社して,会議に備えることも考えられます。よって,今日のうちにつたえなければならない判断になります。

 (4)は,「本部長」から「葬儀への代理参列の依頼」です。本部長は上司にとって上役です。しかも,取引先会長の葬儀となれば上司はよほどのことがない限り引き受けることになります。しかしながら,A子が勝手に承諾の返答をするわけにはいかず,上司の了解を得なければなりません。また,葬儀に参列するためには礼服などの準備も必要で,伝えるのが明日では遅いということになります。

 (5)は,「得意先」からの「面談予定変更の問い合わせ」です。この場合は,先方の希望に沿って変更に応じることになります。希望変更日が「明日」というのですから,返事は今日中にしないといけません。上司の都合を聞いてすぐに連絡するのが秘書の役目です。

 生徒・学生に,本問について解説した後の授業展開としては,A子が明日予定通り休むとしたら今日中に何をしておきべきか,考えさせるとよいでしょう。あるいは,選択肢の内容から上司の明日の「日々予定表」作らせてみてはいかがでしょうか。それにより,上司のスケジュールに伴う秘書業務を具体的に挙げてもらうのも有効な指導法です。秘書の業務が欠かせないことが理解できるでしょう。
(『就職指導ニュースvol.48』より)