【ビジネス実務マナー検定】 「お客さま本位」という考え方を理解する

第58回 ビジネス実務マナー検定2級(必要とされる資質)より

【問題】

Q.営業課の大橋将太は課長から、「君は取引先の評判がいいね。これからもその調子で頼むよ」と褒められた。次は大橋が日ごろ取引先に対して行っていることである。中から不適当と思われるものを一つ選びなさい。

1)相手が砕けた調子の言動をしても、立場をわきまえて丁寧な態度で接している。
2)時間をやりくりして取引先に小まめに顔を出し、役立ちそうな情報を提供している。
3)時には直接販売につながらないことでも、頼まれたことは誠意をもって協力している。
4)現場に多少の無理や負担を掛けさせても、取引先の注文にできる限り応えるようにしている。
5)取引先とのトラブルには、原因がどちらにあるかに関係なく、こちらに非があるとして対処している。

【解説】

 「お客さま本位(お客さまのために)」で行動できているかが鍵になる問題です。お客さま本位とは、「お客さまに喜んでもらうためにはどのように行動すればよいか」を考えることがポイントです。
 
 不適当は(5)。正答率は46.5%でした。トラブルとは手違いや事故のことです。トラブルには損害がつきもので、その賠償責任はトラブルの原因がある側が負うのが一般的です。それを、取引先とのトラブルは原因がどちら側にあるかに関係なく、全て自分側に非があるとして対処するのでは、自社に無用の損失をもたらすことになります。このような営業マンが取引先に評判が良いのは当たり前ですが、「お客さま本位」を履き違えている典型例です。

 それでは、その他の選択肢を順に見ていきましょう
 
(1)大橋は取引先に商品やサービスを買ってもらう立場ですから、選択肢のように取引先を立て、腰の低い謙虚で丁寧な態度を崩さないのが基本的な態度です。顔なじみになると、友達のように気さくな調子で接してくる担当者はいます。しかし、自分の立場をわきまえず、相手に合わせて砕けた調子の言動で接するのはNG。もちろん、親しみやすさは営業マンにとって必要な資質ですが、「親しき仲にも礼儀あり」ということです。

 (2)特にこれといった用事がなくても、時間を見つけて「○○の在庫がそろそろ切れるのではありませんか」「耳寄りな情報がございまして」などと取引先に顔を出す。求められるのはまさに、一昔前の酒屋や米屋の御用聞きの精神です。もちろん訪問前にはアポイントメントが原則。お客さまから求められる前にこちらから働き掛けるフットワークの軽さも、営業マンに求められる資質です。

 (3)取引先の要求が販売に直接つながらなくても、お客さまのために時間を取って汗をかく。その姿勢は信頼関係を深め、その後の取引によい影響をもたらすはずです。

 (4)取引先にとっての満足とは、希望がかなうことです。つまり、要求に対して100%応えてくれる営業マンがよいに決まっています。例えば、10日かかる納期を7日でと頼まれたら、製造や物流の現場に掛け合って、7日でやってもらう努力をします。7日が駄目なら8日でやってもらうようにします。100%が無理でも、できる限りお客さまの要求に応えようとするのが営業の基本です。

 お客さま本位という考え方は、営業マンに限らず、製造や物流に携わる人たちなどあらゆる企業人に求められる資質です。お客さまのためとはいえ、自社の人たちに、多少であっても無理や負担を掛けさせるのはいけないのではないかと考えた受験者が多かったようです。(4)を不適当と答えた受験者は、42.1%という結果でした。授業では、(1)~(4)の行動と比較してその違いを理解させましょう。
(『就職指導ニュースvol.48』より)